書籍:「習慣病」になったニッポンの大学
私は「大学進学率50%」、「大学全入時代」という言葉に否定的な感情を抱いてしまうのですが、冒頭、筆者の矢野眞和氏はこれらを「未だ道半ば」、「途上」と考えている所に少々違和感を覚えたので興味をひきました。「名ばかり大学生なんて」とか、「大学は職業訓練学校じゃないぞ」とかお思いであれば、是非お手にとって見ては如何でしょうか。
「習慣病」になったニッポンの大学―18歳主義・卒業主義・親負担主義からの解放 (どう考える?ニッポンの教育問題)
- 作者: 矢野眞和
- 出版社/メーカー: 日本図書センター
- 発売日: 2011/05/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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大学入試改革やアクティブラーニングという言葉が私の身辺で騒がれはじめて5年ほど、アクティブラーニングが社会に何をもたらすのか自分の頭で考え初めて3年ほど、「公教育は経済に従属している」という言葉が頭に浮かんで数ヶ月ほどたって、この書籍を手に取りました。で、この書籍では「大学かくあるべし」という「精神論」では無く、財源・人材・環境・時間などの「資源論」を切り口にされている点が非常に良い刺激になりました。
ただ後半、著者は「大学教育の無償化」や「社会人経験者の在籍数増」などを訴えています。そのメリットについて同意出来る部分は大きいのですが、前者のそれを容認できる世論形成は難しそうであること、後者のそれを許せる経済状況にある人は圧倒的に少ないことが、著者の主張に現実味を与えない壁となっていると感じました。 ただ、企業が15~18歳採用を拡大したり、2~4年の就学支援期間を設けたりと、社会全体で「学ぶ」ことの価値を、または「学ぶ意欲のある」ことの価値を評価・支援するようになればあるいは、と思います。
企業からの寄付金という形で財源を確保し、寄付金の多寡により法人税とか減免すれば面白いのではないでしょうか。
この書籍に関心あるかな、と思うのは以下のような人です。
- 教育業界に携わる人
- 「大学改革」の大まかな流れを知りたい人
- 大学進学を考えている高校生
- 大学進学を考えている高校生の保護者
書籍:小学4年生の世界平和
「小学4年生の世界平和」という本を読んで、「知的スタミナ」という言葉が目にとまりました。
書籍の概要を述べると、アメリカ合衆国の小学校教師、ジョン=ハンター氏の30年にわたる取り組みについてのエッセイという形になっています。彼の考案した「世界平和ゲーム」は、環境・資源・民族・経済問題などが複雑に絡まり合った現代社会の縮図を小学3~4年生に提示し、これらを数週間ですべて解決させるものです。子ども達は1国の首相として、または国防大臣として、あるいは有力な市民として、時には武器商人や破壊工作員として、一種のロールプレイを通じてゲームに参加していきます。このゲームに参加した生徒達が、どのような経験をし、どのような変化がうまれたか、という内容が中心です。
ゲーム自体いかにも魅力的なアクティビティですが、ハンター氏はこのゲームを実施するのに必要な資質が、教師達と子ども達それぞれにいくつかあると述べています。その一つに「知的スタミナ」という言葉が含まれていました。
ハンター氏はこの「知的スタミナ」という言葉に多くの定義や説明を当てずに用いています。しかし文章のあちらこちらに彼の人柄や重要視しているポイントがあらわれていて、何となく理解したような気になってしまいます。ちなみに、「知的スタミナ」についてハンター氏の言葉を借りると、
- すぐに見つかるような安易な答えなどない厳しい問題に、じっくり時間をかけて取り組めること
- 答えが「形を成してくる」こと待つことができること
- 時間と反復で育まれること
にヒントがあるように思えます。教育業界で叫ばれるアクティブラーニングや、高大接続改革について思いを巡らしてもやもやとしていた折、「知的スタミナ」という言葉がなにやら腑に落ちる感覚で受け入れられました。何ともしっくりとくる言葉です。
この書籍に関心あるかな、と思うのは以下のような人です。
- 教育業界に携わる人
- 国際社会や環境問題を扱う仕事に従事する人
- ワークショップやグループワークに関心がある人
- チームワークやリーダーシップについて学びたい人
※あくまで個人の意見です。