speakin' out

頭の中を整理するためには、言葉に出すと良いよね!

書籍:「習慣病」になったニッポンの大学

 私は「大学進学率50%」、「大学全入時代」という言葉に否定的な感情を抱いてしまうのですが、冒頭、筆者の矢野眞和氏はこれらを「未だ道半ば」、「途上」と考えている所に少々違和感を覚えたので興味をひきました。「名ばかり大学生なんて」とか、「大学は職業訓練学校じゃないぞ」とかお思いであれば、是非お手にとって見ては如何でしょうか。

「習慣病」になったニッポンの大学―18歳主義・卒業主義・親負担主義からの解放 (どう考える?ニッポンの教育問題)
 

 大学入試改革やアクティブラーニングという言葉が私の身辺で騒がれはじめて5年ほど、アクティブラーニングが社会に何をもたらすのか自分の頭で考え初めて3年ほど、「公教育は経済に従属している」という言葉が頭に浮かんで数ヶ月ほどたって、この書籍を手に取りました。で、この書籍では「大学かくあるべし」という「精神論」では無く、財源・人材・環境・時間などの「資源論」を切り口にされている点が非常に良い刺激になりました。

 ただ後半、著者は「大学教育の無償化」や「社会人経験者の在籍数増」などを訴えています。そのメリットについて同意出来る部分は大きいのですが、前者のそれを容認できる世論形成は難しそうであること、後者のそれを許せる経済状況にある人は圧倒的に少ないことが、著者の主張に現実味を与えない壁となっていると感じました。 ただ、企業が15~18歳採用を拡大したり、2~4年の就学支援期間を設けたりと、社会全体で「学ぶ」ことの価値を、または「学ぶ意欲のある」ことの価値を評価・支援するようになればあるいは、と思います。

 企業からの寄付金という形で財源を確保し、寄付金の多寡により法人税とか減免すれば面白いのではないでしょうか。

 この書籍に関心あるかな、と思うのは以下のような人です。

  • 教育業界に携わる人
  • 「大学改革」の大まかな流れを知りたい人
  • 大学進学を考えている高校生
  • 大学進学を考えている高校生の保護者